日本生物地理学会 2007年度大会シンポジウム

進化と系譜:ツリー,ネットワーク,視覚言語リテラシー

2007年4月8日(日)13:00-15:30
立教大学74号館 7101号室(〒171-8501 東京都豊島区西池袋3-34-1)


[趣旨] (三中 信弘)

  自然界や人間界で遭遇する事象や現象を巡る情報を「可視化」することは, 図形言語のもつ潜在力をその使い手と読み手に印象付けると同時に, 利用するユーザー側にリテラシーを要求する.現代の新化学や系統学では, さまざまな形式の「系図言語」(ツリーやネットワーク)が広く用いられている. ある図形言語が系統関係や血縁関係を表すために用いられているとき, その図形言語のどの部分にどのような形式でそれらの関係が表示されているのかを読みとる必要がある. 形質情報を要約するツールの観点からみたとき, ツリーやネットワークはメッセージを伝える図形言語としての性格がはっきりする. 系図言語のリテラシーという点でいえば,せっかく高性能のコンピューターを用いて系統関係が推定されたとしても, 系図言語のグラフィック・デザインが貧しいために,あるいは使い手や読み手側のリテラシーが足りないために, 視覚的コミュニケーションに支障をきたす場面もある. 大規模なデータに基づく近年の分子系統解析では, 複雑な構造をもつツリーやネットワークを推定することができるようになった.しかし, そのような巨大で錯綜したグラフィックスとしての系統樹や系統ネットワークを読み解くために十分なリテラシーを 今のわれわれは残念ながらまだ持ち合わせていないのではないか.